注文住宅を建てる際に、たびたび登場する用語のひとつに「ZEH」というものがあります。ZEHとは、「エネルギー収支をゼロ以下にする家」という意味で、住宅が生み出すエネルギーと年間消費するエネルギーの量を実質的にゼロ以下にすることを意味します。そこで今回は、ZEHの概要やメリット、補助金について解説します。
ZEHの概要
ZEH(ゼッチ:ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)は、年間を通して消費する住宅のエネルギー量と、太陽光発電システムなどで創り出すエネルギー量の収支をゼロ以下にすることを目指した住宅のことです。省エネルギー(エネルギー消費量を減らす)と、創エネルギー(太陽光発電など)を組み合わせることで、エネルギー自給を目指します。
実現には、大きく分けて「省エネ」「断熱」「創エネ」の3つの要素が重要となります。「省エネ」では、家庭内のエネルギー消費量を減らすことが求められます。LED照明や省エネ家電などの高効率設備を導入したり、HEMS(ホーム・エネルギー・マネジメント・システム)を利用した管理などがあります。
「断熱」では、高性能な窓や断熱材を使用することで、エネルギーロスを最小限に抑え、夏は涼しく冬は暖かい快適な居住空間を実現します。「創エネ」では、消費するエネルギーをまかなうだけのエネルギーを創り出します。
省エネ性能では一次エネルギー消費量を基準値より20%以上削減すること、断熱性能ではUA値(外皮平均熱貫流率)を基準値以下にすること、創エネ性能では年間消費エネルギー量以上の再生可能エネルギーを創出することが求められます。
ZEHは、エネルギー消費量の削減度合いに応じて5つに分類されます。ZEHは、政府が掲げるエネルギー基本計画においても重要な役割を担っており、戸建て住宅だけでなく、マンションなどの集合住宅にも導入が進んでいます。環境問題解決への貢献と、快適で経済的な暮らしの両立を実現できるため、次世代の住宅としてますます注目されています。
ZEHを導入するメリット
家計に大きな影響を与えるエネルギーコストを抑えられます。高効率な省エネルギー設備や断熱性能の強化、太陽光発電システムの導入により、電力消費を大幅に削減できます。余った電力を電力会社に売却することで、新たな収入源を得ることも可能です。
近年増加傾向にある自然災害への備えとしても有効です。太陽光発電と蓄電池を組み合わせることで、停電時でも自立した電力供給が可能です。この仕組みは、普段の生活を支えるだけでなく、電気自動車の充電にも活用できます。
不動産としての価値向上も見逃せません。第三者機関による省エネ性能の評価が高まることで、将来的な売却時により有利な条件での取引が期待できます。
快適な住空間の実現にも寄与します。高断熱・高気密構造は、外気温の影響を受けにくく、夏は涼しく、冬は暖かい快適な室内環境を実現します。急激な温度変化による健康リスクを低減するだけでなく、カビやダニの発生を抑え、健康的な生活をサポートします。急激な温度変化を避けることでヒートショックの危険を減らし、家族全員が安心して過ごせる空間を提供することにもつながります。
ZEHは経済的なメリットだけでなく、安心・安全な暮らしや快適な住環境、資産価値の向上など、多岐にわたるメリットをもたらします。
補助金や減税を上手に活用してお得にZEH導入
高性能な省エネルギー住宅であるZEHは、従来の住宅と比べて建築費用が高額になりがちです。しかし、その初期費用を抑え、お得に実現する方法があります。
国や地方自治体が実施している補助金や減税制度を活用することで実現できます。ZEHの普及を後押しするため、さまざまな支援策が用意されています。
例えば、国が実施している代表的な支援策としては、「ZEH支援事業」や「こどもみらい住宅支援事業」などがあります。これらの制度を利用すれば、交付金を受け取れるようになります。ZEH支援事業は、ZEH住宅の新築を検討している個人や、販売を行う企業が対象です。ZEH基準を満たす住宅には一戸あたり55万円、さらに高い性能基準であるZEH+住宅には100万円の補助金が支給されます。
「次世代ZEH+(注文住宅)実証実験」という制度も存在します。さらに先進的な省エネ性能を持つ次世代ZEH+住宅の建築を支援するもので、一戸あたり100万円の補助を受けられます。
「次世代HEMS実証事業」では、次世代ZEH+住宅に必須となるHEMS設備の導入費用の一部として、1戸あたり112万円の補助が受けられます。国による支援策に加え、地方自治体独自の補助金制度も用意されている場合があります。これらの制度を組み合わせることで、ZEHの建築費用を大幅に抑えられるでしょう。
まとめ
ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)は、年間の住宅エネルギー消費量と創出量の収支をゼロ以下にする住宅です。省エネ、断熱、創エネの3要素が重要で、高効率設備や高性能断熱材、太陽光発電システムなどを導入します。メリットは、光熱費の削減、災害時の電力自立、不動産価値の向上、快適な住環境の実現などがあります。導入には高額な初期費用がかかりますが、国や地方自治体の補助金制度を活用することで、費用を抑えられるでしょう。